■ 活動の要件
※ 『RDA活動のためのガイドブック』よりの抜粋です。
 詳しくは『RDA活動のためのガイドブック』をご参照ください。



1.馬の確保
障害者乗馬において騎乗者に直接刺激を与えるのは馬であり、したがって馬の選定には特に気を配らなくてはなりません。RDAの活動には馬の善し悪しが決定的で、その選択には細心の注意が必要です。

騎乗者の進歩を促すのは馬自身であって、私たちはその手伝いをするのみです。
望ましい馬としては、まず健康で落ち着きがあり、性格が穏やかで信頼でき、さらに誘導が容易で歩行にリズムがあり、乗馬下馬の際にはじっと停止できる馬でなければなりません。
年齢的には5〜15歳の馬が良く使われ、体高は1.2〜1.5mの馬が使いやすく、4歳以下の馬は体の発育、馬自身の経験が不足しているので使うことは避けます。体高については騎乗者の体格、介助する人の体格などにより決められますが、日本人は小さいので、あまり大きな馬は特別な場合を除き扱いにくいと思います。だいたい、サイドウォーカーの頭が反対側から見える程度を大きさの最大の目安とすれば安全です。
騎乗者の障害、身長、体重などにより合った馬を割り当てるようにします。騎乗者の安全確保と馬の健康管理のため、インストラクターは馬の負担重量を把握しておく必要があります。
※馬の負担重量について詳しくは『RDA活動のためのガイドブック《第六章》』をご参照ください。

完璧な馬というのは、なかなか難しいものです。
馴致、音声調教などはとても重要で、新しいことをする前には乗りなれた人が必ず練習しておくことが必要です。大きさを除いては、乗馬クラブのおとなしい馬であればこなすことができるでしょうし、あとは日々の調教で育てていけるでしょう。
良いRDAの馬というのは、どのような人が乗っても信頼でき、素直に人のやりたいことができる誰でも乗りやすい馬を指します。
障害があるとアンバランスであることも多く、大声を出したり、急に馬の上で動いたりすることもあるので、馬たちはかなりのストレスを受けることでしょう。そのストレスを発散することのできる運動と、厩舎管理のできるインストラクターがいることが望まれます。
障害にはさまざまなタイプがあるように、騎乗者によって適切な馬も変わってきますがおおむね次ページのような馬が障害者乗馬に適しています。

!ポイント!
≪年齢≫

・5〜15歳。
・4歳以下は経験が浅いので適切ではありません。
・年をとりすぎていると疲れやすく故障を持つ場合も多いので良質な運動は期待できません。
≪性別≫
せん馬(去勢された牡馬)、または牝馬。
神経質と思われる牝馬が騎乗者に対して意外な思いやりを示すことも多くあります。
≪性質≫
我慢強く落ち着きがあり、穏やかで信頼ができ、従順で人と友好的な馬。
≪大きさ≫
介助しやすい体高1.2〜1.5メートルくらいの馬/ポニー。
≪歩様≫
運動の移行が滑らかで、レギュラーでリズミカルな歩様。
≪その他≫
乗り降りに時間のかかる騎乗者が多いので、静止できることが重要です。
騎乗者突然大声を上げたり触ったりという場合もあるので、いろいろな物事に馴致させておく必要があります。



2.障害者用乗用馬の選び方
セラピューティックスポーツに対する需要や気運が高まるなか、特に乗馬は、馬という生き物ならではの動きが連続的に騎乗者の身体に与えられることによって、特筆すべき理学的(身体的)な効果が得られるものです。
インストラクターや理学療法士は、馬の動きと、それによる馬と騎乗者との相互作用を理解していなければならなりません。

(1)馬の適性
≪構造・体型≫
馬の運動能力は生まれつきのものもありますが、調教によって改良できることが多いものです。
ストライドが大きくリズミカルで細い馬は、痙攣を和らげるのに使うことができます。
また、胴が太くてストライドは短かくても反撞のない馬は、下半身麻痺の人のバランスと体幹のコントロールの発達に役立ちます。

≪気質・気性≫
気質・気性は、その馬の動きに反映されます。
神経質で急激な動きや素早い反応をする馬から、鈍重な動きや明らかに反応のない馬まで多様です。
最悪な人馬の組み合わせが偶然にもあらゆる法則に逆らって、注目すべき結果を生む場合があります。まれに、騎乗者の発達に役立てるために、意図的にこうした組み合わせをする場合があります。

≪老齢馬あるいは不健康な馬≫
老齢であるがゆえの動きは人の場合と同様です。
明らかにコンディションの悪い馬や病気の馬は、無気力で反応が悪い傾向を示します。
健康でも生まれつき鈍重な馬や怠け癖がついた馬と、こうした不健康な馬を見分けるには経験と調教眼を持った人の助言やサポートが必要となります。
 ・ストライドは短く、弾発性が減少します。
 ・関節が堅くなります。特に長時間静止していたり、動きが制限された後に顕著です
  がウォーミングアップを行うことで改善されます。
  こうした馬は、騎乗前に引き運動や調馬索運動をさせると良いでしょう。
 ・歩調や移行が滑らかではありません。
 ・重い騎乗者や不安定な騎乗者を乗せるとバランスが取りにくくなり、ストレスを
  与えます。

(2)馬の動き
≪歩度・ペース≫
騎乗者は、馬という「生きた動きをする土台」の上でバランスを維持することが求められます。そして、馬のペースによって生じるさまざまな動きによって、適応能力の発達が促進されます。この点においても、馬は他の手法に比べて有用といえます。
介助付きで座るだけの常歩運動から駈歩や障害飛越まで、乗馬の目標を次第に細かく段階化します。それぞれの段階で求められるリラクゼーション、バランス、筋肉運動の整合、姿勢のコントロールなどを達成するための意欲が増進します。
そして、ここで行われる運動により、循環機能、筋力、総合的な健康の同時並行的な改善、増進を図ることとなります。



3.馬場の確保
障害者乗馬には、乗馬に集中できる環境と安全の整った馬場が必要です。
天候に左右されやすくデリケートな身体を持った騎乗者には、屋内馬場のあることが望まれます。
また、こだわりが強い騎乗者の場合、天候や環境により馬に乗れない日があることが理解しにくいものです。
直射日光に弱い騎乗者、体温調節ができない騎乗者も多いので、練習内容は、そのつど臨機応変にしていくと良いでしょう。
特に視覚障害を持った騎乗者にとって覆い馬場は自分の位置を壁からの音の反射で感じることができるので、ぜひとも勧めます。

障害を持っているとどうしても生活体験が乏しくなるので、外乗できるチャンスがあれば、言語の習得と共に遠くへ目線を合わせやすいので、姿勢の改善にもなります。
明るい陽射しと、風を受けて馬に乗ることは、心身のリフレッシュに多いに役立つことでしょう。

活動中、馬場の出入り口は必ず閉めます。通常の馬場の広さは20m×40mあれば充分でそれをまた細かく仕切ることもあります。
平坦な馬場での安定したペースは自信とリラクゼーションを助長できます。保護された環境のもとでの坂の上り下りや凸凹した場所での騎乗は、騎乗者の姿勢維持や変則的あるいは予期しない動きに対するバランス能力を促進します。
外乗で馬をコントロールすることは、身体運動のほかに判断力や自信をつけます。

地面から直接乗馬できない騎乗者のために、マウンテンブロック(乗馬用踏み台)や車椅子ごと馬の高さまで上ることのできるスロープがあるマウンテンランプなどを利用すると便利です。
その他、障害者用トイレの設置、水飲み場、休息室などがあれば望ましいでしょう。



4.馬具と馬装
慎重に選ばれた特別な馬具は、騎乗者と指導者にとって有効です。どんな道具も、使い方、装着の仕方について基本的なルールをよく踏まえた上で選びます。
騎乗者の身体、馬、そしてボランティアにとって、快適で安全なものでなくてはなりません。大切なのは、騎乗者と馬に合った馬具を考案して使用することです。
馬具の点検には、充分に気をつけることが重要です。痛みを感じない騎乗者がいたりバランスの悪い鞍では、良い姿勢を保つことはとても難しいのです。
普通は、馬の顔にぴったりと調節のできる無口を付け、その上から頭絡を付けます。
基本的にはリードは無口に付けますが、場合によっては、リーダーが馬を扱いやすくするためにカップリングを利用してリードはハミに付けます。
鞍に関しては、馬場鞍、障害鞍、総合鞍、ウエスタン鞍、軽乗鞍、ムートンなど騎乗者に合わせて選びます。
特別な道具はいろいろありますが、騎乗者の自立を助ける物であって"便利用品"になってはいけません。通常の乗馬スタイルで乗れることが一番なのですから。

馬装には充分に注意しましょう。騎乗者のバランスがとりやすいように、また馬にとっても快適であるような注意が必要です。大切な馬にダメージを与えると、数日間使えなくなることがあります。貴重な乗馬時間の確保のためにも慎重に馬装しましょう。
ルールは通常の乗馬と一緒です。馬の骨格に合った鞍と装鞍は、騎乗者と馬にとってとても大切であることを認識しなければなりません。
騎乗者の拳が馬の口を傷つけずに馬をコントロールできるようであれば、ハミに手綱を付けます。もし騎乗者の拳が不安定であれば無口に手綱を装着します。
鞍に掛けるムートンカバーは、痛みを訴えない人の鞍ずれを予防し、馬の背中の保護にもなります。
使用した馬具は、全て必ず点検と手入れをします。騎乗者と一緒にすることもお勧めします。
※馬具と使用例など詳しくは『RDA活動のためのガイドブック』をご参照ください。



5.障害者乗馬のチーム編成
障害者に安全で効果的なレッスンを行うためには、チームワークが不可欠です。
実際に障害者が馬に乗るためには、多くの人の助けが必要です。
それによって、狭くなりがちな人間関係が広がり、多くの人と馬にふれあうチャンスが生まれるのです。
 ・騎乗者
 ・馬(ポニー)
 ・インストラクター
 ・アシスタントインストラクター
 ・リーダー
 ・サイドウォーカー
 ・コーディネーター




6.突然の事故の応急処置
いざというときに慌てないように、救急箱の保管場所や医師の電話番号などが誰でもわかるようにしておきましょう。
落馬や発作など突然の事故が起きたときは、インストラクターの指示に従って落ち着いた対応を心掛けます。
 ・乗馬を中止し、馬を騎乗者から離します。
 ・発作が軽い場合は馬上で静止させ、治まってから下馬させます。
 ・重傷の際には保温を心掛けます。
 ・救急車の手配は躊躇なく行います。
 ・ボランティアヘルパーも、救命救急講習を受けておくことが望ましいでしょう。